このタイトルを見て「え!そうなの?!」と驚いた方もいるかもしれませんが、もちろんこれは全ての幼児教育機関でのことではなく、まだまだ極一部の話です。幼稚園や保育園でプログラミングに取り組むか否かは各園の自由で、教育的観点や経営的観点から、プログラミングに力を入れ始める園が出てきたという話です。
実際に弊社にも、幼児教育の事業者様からのお問い合わせは多く来ており、その数は2023年から急激に増えてきています。そこで今回は、保護者の方だけでなく幼児教育に関わる方々にも参考になればと思い、実際に行われた幼稚園でのプログラミングの様子とともに、実施の効果や園にとっての課題や価値についてお伝えいたします。
年中さんが大盛り上がりのプログラミング!
2024年2月に千葉県市川市にある三愛幼稚園(学校法人市川東学院)でKOOVⓇ(クーブ)を使ったプログラミングが行われました。対象は4歳~5歳の年中さん全員で、3人1組のグループを作っての取り組みとなりました。
子ども達は教室に入ってくると行儀よく席に座りつつも、目の前にあるカラフルなKOOVのブロックを見て、「何するのー?」とワクワクした様子です。そこで「今日はプログラミングでLEDライトを光らせて、ブロックでお花を作って、光るお花を作っちゃうよ!」とテーマが伝えられると「なんだが楽しそう!」とみんな積極的です。驚いたことに「プログラミングやったことある人?」と聞くと、20%くらいの子が手を挙げており、ご家庭の関心の高さを感じました。
取り組みの最初はいきなりプログラミングです。LEDライトが点灯する見本を見せて、やることのイメージを持てたらスタートです。指示通りにタブレットを操作して、【LEDをオン】【〇びょうまつ】とプログラムを繋いでいきます。グループ内でタブレットを順番に回
していくのですが、操作に戸惑っている子がいると先に経験した子がさっそく「こうやるんだよ」と教えてあげたりして、大きな混乱もなく順調に進んでいきます。タブレット操作の経験値には差がありますが、みんなで協力し合って和やかに取り組んでいました。
【〇びょうまつ】の〇に好きな数字を入力して、点灯する秒数が決まったらプログラム完成です。最後に【てんそう】ボタンを押すとLEDが点灯し、各テーブルから「おーっ!」「わっ光った!」などと歓声があがりました。その後は、秒数を変える→転送する→LEDを光らせる→何秒光ったか数えて確認する、を順番に何度も繰り返します。ここまで15分程度ですが、子ども達はあっという間にタブレットの操作に慣れてサクサクと動かしていました。
こう書くと「本当に年長さんがプログラムを組めるのか?」と思われる方もいると思いますので補足しておきます。今回の取り組みでは、下の画像のようにプログラミング自体はとても簡単なものでした。5歳児がプログラミングの最初の一歩を踏み出す時は、これくらいで充分なのです。それでもしっかりと良質な試行錯誤と新しい体験をさせることができます。
創造力を発揮してブロックでお花づくり
プログラミングを終えると次はブロックでのお花づくりです。子ども達は、初めて触るKOOVのブロックに戸惑いながらも、思い思いに花を作っていきます。赤や青で色を揃える子、できるだけカラフルにしようとする子、花に羽をつけて「ドローンで飛ぶお花」を作る子までいました。長い花、小さい花、顔がついている花など形も様々です。最初は何を作っていいかわからず手が止まっていた子も、他の子の様子を見て自然と作り始めていました。
10分程で花が完成すると、その花の好きなところにLEDライトをくっつけて光らせます。花の上部を光らせる子、茎の根元を光らせる子、半透明のブロックの特長を活かして花を裏から光らせる子と、ここでも各自の発想で自由に取り組んでいました。
最後は「幼稚園やお家にあるお花は夜になると見えなくなっちゃうけど、もし光ったら夜でも綺麗に見えて楽しいよね」と、実際のお花が光ったらどうだろうかと想像力を膨らませる会話をしました。ここまで30分程度の短い取り組みでしたが、誰一人途中で飽きることなく終わりました。「もっとやりたかった!」とか「うちのお花も光ったらいいのに」とそれぞれの感想を口にしながらブロックを片付けていたのが印象的です。
幼児期におけるプログラミングの学習効果
これは教材や取り組みの仕方によって様々あるという大前提の元、今回のKOOVを使ったプログラミングのケースについてご紹介します。
プログラミング学習の素地
この年代にとってはプログラミングそのものの理解をすることは難しいことです。しかし理解を目的とせず遊びの中で体験させることで、「プログラミングやったことあるよ!楽しかったよ!」と思ってもらえます。このポジティブな感情があるかないかで、小学生になった時、プログラミングやデジタルデバイスを使った授業にのぞむ姿勢に差が出るでしょう。またこういった幼児期の体験が、その後のICTへの興味やデジタルリテラシーの醸成に繋がっていくものと考えています。
創造力の拡張
創造力は、幼児期における教育活動のあらゆるシーンで大切に考えられています。自然との触れあい、知識の習得、他者との会話など、様々な方法で創造力は育まれていきます。その手段が多いほど、体験の幅が広いほど、創造力も大きくなると考えると、プログラミングの体験は更に子ども達の創造力を拡げるのに役立つと考えられます。AIやテクノロジーが急速に発展している今の時代に、ロボットに代替できない人間の価値として創造力の必要性は益々高まっていますので、テクノロジーを使ったアプローチはとても現代的で効果的な方法だと考えています。
モノをじっくり見る習慣
プログラミングの内容やロボットの動きを確認するには、何度も試して、その都度注意深く見返す必要があります。また、KOOVのブロックは、組み立てに工夫が必要です。KOOVを使ったプログラミングでは、子ども達は一つ一つのモノゴトをじっくり見ることを求められます。そうしないと何が上手くいっていて、何が上手くいっていないのか気付けないからです。今の子ども達は、スマホやタブレットでたくさんの情報に短時間で触れていきます。目から入った情報を知識としていきますが、それでは深い理解はついてきません。そういった環境に置かれた現代の子ども達には、意識的に”じっくり見る”機会を作ってあげる必要があります。その体験を様々な手段で楽しく繰り返すことによって、じっくり見る習慣がついていくはずです。
自分の考えを形にする体験
子どもの想像力は豊かです。大人では考えもつかないようなことを思いつき、自身の世界観を楽しむことができます。もし想像したことを、更に具現化できたらどうでしょうか?もっともっと自身の思考を深めていくことができるのではないでしょうか。紙にペンで絵を描く、段ボールをハサミで切ってテープで貼り合わせる、といった通常の工作で使う文房具と同じように、プログラミングもモノゴトを実現する為の手段の1つです。プログラミングを学ぶことは、実現の手段を増やす取り組みで、「考えたことは実現できる」ことを体験を通して学ぶことができます。
幼児プログラミングで過度な期待は禁物
他にも様々な効果がありますが、最後に幼児期におけるプログラミングで、期待し過ぎるべきじゃないことについて触れておきます。
先ず第一に「プログラミングを理解すること」です。プログラミング教育は、よく論理的思考力を育めると言われますが、5歳ぐらいではそもそも論理的に考える力が未発達です。理解することを目標に掲げると、遊びよりも勉強の要素が強くなってしまい、わからないと苦手意識を持ってしまうことに繋がります。今回の取り組みでも「わかった?」という問いかけは一切しないように心掛けました。
次に「作品の完成度を求めること」です。一般的に未就学児は、設計図通り作るよりも自由にできた方が、ストレスなく楽しめるものです。「この形を作ってね」と細部まで決めるよりも、大雑把なテーマ以外は、子どもの自由意志に任せた方が積極的に取り組んでくれますし、創造力を最大限発揮してくれます。その結果、大人の視点から見ると「何だかよくわからないもの」「現実にはあり得ないもの」がよくできてきます。しかし、それを修正させる必要はありません。例えば完成度を求めると、せっかく自由に楽しく作っても「こんなお花はないよ」となります。それが続くと、それっぽい作品を作ろうとしたり大人の顔色を伺ったり、どんどん個性を発揮しにくくなってしまいます。
幼稚園・保育園の差別化としてのプログラミング教育
ご相談を頂くような積極的な事業者様でも「プログラミングを教えられる先生がいない」ことが必ず課題となります。しかし実際には幼児が相手ですし、技術面においては難しいことを覚える必要はありません。三愛幼稚園でも事前に約2時間の研修を行いましたが、基本的なことはそれで充分覚えられ、後は実践あるのみです。本当に大事なのは、子どもの考えを否定しない、仲良く順序良く取り組ませる、といった元々保育の現場で求められているスキルです。当然ですが、プログラミング技術に長けていても、子ども達との接し方が上手くなければ成立しません。その意味で、先生には自信を持って取り組んでもらいたいと思っています。
加速する少子化対策として、幼児教育・保育の無償化が進んでいます。そのような環境の変化もあって、幼児教育の現場は今後益々差別化して特色を出していく必要があります。激変する社会の中で、プログラミングとのステキな出会いを用意してくれている園と、旧態依然として変化を避けている園があった時、果たして保護者はどちらを選ぶでしょうか?
プログラミング教育に迷ったら
「子どもに体験させてみたいけど、通っている園では機会がない」という保護者の方、「うちの園でもやってみたいけど何から始めていいかわからない」という教育事業者の方がいましたら、弊社までお問い合わせください。それぞれの環境に合わせたご提案をさせて頂きます。
植物に触れるように、テクノロジーに触れ、
動物を見るように、ロボットを観察し、
鬼ごっこをして遊ぶように、プログラミングして遊ぶ。
弊社は、変化の激しい今の時代を生きる力を育む経験を、1人でも多くの方に広げていければと願っています。
幼稚園プロフィール
学校法人市川東学院【三愛幼稚園】
〒272-0833 千葉県市川市東国分1-20-12